2020年2月。「バス路線を歩く旅」をスタート。
旅のルールを決めた。
奈良県橿原市の近鉄大和八木駅からゴールの和歌山県新宮市のJR新宮駅まで、路線バス「八木新宮線」のルートに沿って歩く。
歩道がなかったり路肩が狭かったりして、道路脇を歩くのが困難な区間や、そのほか特別な理由がある時は一時的に路線から離れる事も出来る。
バスと歩きではスピードが違うため、何日かに分けて歩くことになるが、その日のゴール地点からいったん三重県津市の自宅に帰る時や、続きのスタート地点に戻る場合には自家用車を使わず、必ず「日本一のバス」を使う。
道中は自分の足が頼りなのだが道中の行き帰りはバスに頼る。
ややこしいが、とにかくバス路線に沿って、バスとすれ違ったり、バスに追い抜かれたりしながら、6~7日間かけて歩いてゴールを目指す。
さて橿原市といえば神話時代の天皇陵(古墳)や大和三山、橿原神宮などが名高いが、江戸時代の建築物が東西600メートル・南北300メートルに渡って集まっているという今井町(いまいちょう)を見ておかなくてはならない。
そこで出発して10分と立たないうちに、バス路線を少し外れる。
今井町は戦国時代につくられた寺内町からいわゆる「商業特区」として江戸中期をピークに発展し、その繁栄ぶりを今に伝える伝統的建造物群は2017年に日本遺産に認定された。
樹齢400年以上と、町の成り立ちから今までを見つめてきた大榎(えのき)のところから町に入った。
町内は歴史資料館やカフェなどもあり、観光シーズンは賑わうのであろうが冬の朝8時半という事で、街並みはしんとしていた。
酒造・醸造を営み、商家が重要文化財に指定されている高木家などの軒先を眺めた。
1800年代初期の建物だという。
町内をまっすぐ西に歩き、代々商業地の元締めを務めていたという今西家住宅のあるところで今井町の集落を抜けた。
バス路線に合流して、国道166号を西に向かう。
橿原市と大和高田市を結ぶ国道は田園地帯に伸び、冬晴れの青空の下、正面には二上山(にじょうさん)、左手に葛城山(かつらぎさん)、金剛山(こんごうさん)と関西でも名の知れた山を望む。
幹線道路で道路交通も多いのだが、バス停の時刻表を見て驚いた。
八木から高田方面には昼間、2時間に1本の「新宮行き」が3本。
という事は、この路線は実質“日本一のバス”が支えているという事になる。
今井町を出て小1時間。
ここで大和八木発新宮行きの朝一番のバスに追い越された。
これからは、八木新宮線のバスとすれ違う度に「1便」「2便」「3便」と呼ぶ事にする。
近鉄南大阪線高田市駅前のアーケード街を進んだが、店は開き始めているものの人通りはなかった。
ここからバス路線は西向きから南向きへと方向を変え、五條方面に向かう「下街道(しもかいどう)」に沿う。
下街道は古くから大和の国の南西部と紀伊の国の北部を結ぶ重要な道筋であり、奈良駅と和歌山駅を結ぶJR和歌山線、近鉄は盲腸線となる御所(ごせ)線が並んで南北に走っている。
お昼は御所駅近くのうどんレストランに入る。
開店早々だったがお客さんが続々と入店し、肉つけ麺のうどんも出汁も美味しかったと記憶している。
近鉄御所線の終着駅を過ぎるころから車通りは少なくなり、徐々に標高をあげていく。
春はツツジが山一面に咲く葛城山は、ロープウェイが大変混雑すると聞く。
葛城山の山肌の針葉樹と落葉樹の境目がはっきりするほど近づいたころ、大和八木発新宮行きの「第2便」に追い越された。
時計の針は午後0時28分。あと3時間以上は歩く。
(第3話に続く)
~“日本一のバス路線” 大和八木~新宮 167キロ+αを歩く~ その③ 奈良県御所市~五條市 - kotarosandayoneの日記 (hatenablog.com)
2021年7月15日更新