kotarosandayoneの日記

街道歩きを中心に、風景などをアップしています

~“日本一のバス路線” 大和八木~新宮 167キロ+αを歩く~ その④五條市から十津川街道 編

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八木新宮線 熊野本宮大社前バスターミナル(2018年撮影)

2020年2月24日(晴れ)

奈良県近鉄大和八木駅から日本一の長距離バスの路線に沿って和歌山県のJR新宮駅を目指して歩いている。

連載は早くも4回目だが、歩き旅の紀行文としてはやっと2日目。

私が歩いて新宮にゴールする前に読者の皆様が途中でリタイアしてしまってはいけないが、書きたい内容も沢山ある。    

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吉野川を渡ったところ 向こうが五條市街(新町側)

宿泊したホテルを朝7時の朝食後すぐに出発して、五條市新町通りをもう一度通り過ぎて、「大川橋」という橋で吉野川を渡った。

ここからは十津川街道になる。

2日目の道のりは五條市街地から、今回の歩き旅の最高点の天辻峠まで、地図アプリの計測で約23キロとあるが、後述するように旧峠を越えていかなければならないので、距離はもう少しプラスされ、更に標高差650メートルの上りとなる。 

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地元の神社と自治会による「祝・甲子園出場 必勝智弁学園」の横断幕が街の一角にかけられていた。

純白に赤いCの文字が浮かぶ人文字で有名な甲子園の常連校。

地元の五條市出身で巨人の4番を務める岡本和真選手を輩出している奈良の智弁学園センバツに2年ぶりに出場するはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、第92回選抜甲子園大会は中止の報がもたらされた。

関係者はもちろん、街の方々もさぞかし残念な思いで幕を仕舞まわれたと思う。

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国鉄「五新線」(計画線)の遺構(五條市内)

さて今回の旅は長距離バス路線に沿って歩くのが目的だが、計画途中でまぼろし鉄道路線となった「五新線」の遺構をたどるのも楽しみだった。

そもそも開通してもいない路線は「鉄道遺構」といってよいのかどうかわからないが、地域の基幹病院である五條病院を過ぎて「まぼろしの鉄道」跡に入っていった。

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単線の幅で、傾斜が緩やかで、アスファルトが敷いてあるのだが、「ここはもともと鉄道が通っていたんだよ」と事情を知らない人に話すと事実と違うにもかかわらず皆が納得すると思う。

実際は一度も鉄道が通っていないし、線路が敷かれたことすらないのだ。

あいかわらず上り傾斜が一定に保たれたまま、「それっぽい道路」は田んぼの中に入っていく。

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つながるはずの線路がつながらなくて、それぞれ盲腸線となって残っている例は中部近畿だと、越美北線越美南線(現・長良川鉄道)。

現在の福井県大野市岐阜県郡上市が鉄道で結ばれる計画だった。

三重県では名張市松阪市を結ぶという意味の名松線もそうだ。

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JR名松線 終着の伊勢奥津駅三重県津市)始発は松阪駅三重県松阪市

松阪から西に、のちの一志郡美杉村まで鉄道は伸びたのだが、小型の蒸気機関車は終着の伊勢奥津駅で水の貯えを行なうと、後ずさりするように松阪まで戻っていった。

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JR名松線の列車は基本1両編成(2018年10月撮影)

線路は名張まで伸びず、赤字やら自然災害やらで常にこの盲腸線は危機に瀕している。現在も終着駅の給水塔が名残をとどめている。

話を戻して、まぼろしの「五新線」のルートはそのまま十津川街道~日本一のバス路線に沿っているのだが、鉄道路線計画が長距離バスに置き換わったという事ではなく、鉄道はもともと木材を運搬するために計画が持ち上がり、長距離バスは当初、奈良の東大寺と新宮を結んでいたが、その後五條市~旧大塔村十津川村を行き来する足として現在に至っている。

日本一のバス路線は始発終着の地名から「八木新宮線」となっているが実際は「五新線」そのものだ。

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今歩いている「線路予定地」は昭和34年に五條から旧西吉野村の区間が基盤整備され(くしくも伊勢湾台風やJR紀勢線全通の年と同じだ)その後鉄道の開通が見込めない中で国道168号線と並行する専用バスレーンに仕立て上げられたのだが、2014年にはその運行も終了した。

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幻の鉄道路線はところどころ車両通行禁止の区間もあるのだが、私は鉄道のために掘られたトンネルを潜り、最近まで使われていた専用のバス停などを見ながら、旧西吉野村役場まではその道を進んだ。

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上が『五新鉄道』の高架橋 奥に五條市西吉野支所(茶色い建物)

五條市本陣交差点(道しるべがあったところ)から国道を南に14キロ

(第5回に続く)

~“日本一のバス路線” 大和八木~新宮 167キロ+αを歩く~ その⑤ 五條市西吉野町~天辻峠 編 - kotarosandayoneの日記 (hatenablog.com)

2021年7月22日更新